昨日、有志の勉強会で話をさせてもらいました。
私が選んだテーマは「解雇予告除外認定制度」。案外、内容までは深く知られていなかったりします。
通常解雇する場合、30日前までに予告しない場合は不足分の解雇予告手当(平均賃金)の支払いが必要です。
しかしこの原理原則でいけば、例えば横領した労働者へ即時解雇(当日に解雇)する場合、30日分の予告手当を支払うことになります…使用者としてはとても納得できるものではありませんよね。
そこで、このような場合に予告手当の支払いを法的に免れる制度があります。
それが「解雇予告除外認定制度」です。
但し次のいずれかに該当する場合で、かつ労基署の認定が必要です。
①天災事変その他やむを得ない事由により事業継続が不可能
②労働者の責めに帰する事由
このうち②の「労働者の責めに帰する事由」とは一体何を指すのでしょうか?
ここは非常に重要であり、あまり知られていないところです。
この疑問を解くカギは「行政通達」にあります。
通達では次の6つのケースを「例示列挙」として挙げています。それぞれのポイントをあげてみましょう。(一部簡略)
①刑法犯
極めて軽微なものでも、使用者が予め不祥事の防止について諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、しかもなお労働者が継続的に又は断続的に行った場合。
事業場外での刑法犯であっても、それが著しく事業場の名誉や信用を失墜するもの、取引関係に悪影響を与えるもの、労使間の信頼関係を喪失させるもの。
②職場規律違反
賭博や風紀紊乱などで職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合。
これらの行為が事業場以外で行われた場合でも、それが著しく事業場の名誉や信用を失墜するもの、取引関係に悪影響を与えるもの、労使間の信頼関係を喪失させるもの。
③経歴詐称
採用条件となる経歴を詐称した場合。
④兼職
二重就労した場合。
⑤無断欠勤
原則2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。
⑥出退勤不良
出勤常ならず数回にわたり注意を受けても改めない場合。
労基署への申請は所定の書式で行います。
認定を受けるためには、就業規則(懲戒解雇事由)や労働三台帳、自認書などの証拠書類を揃えることがポイントです。特に自認書は効果的です。
それを受け、監督官は必ず実地調査を行います。例えば対象労働者等を呼び出して事実確認を行います。認定までおおよそ1~2週間くらいかかります。
手順としては、認定を受けてから即時解雇することが原則です。
認定を受ける前に即時解雇することも考えられますが、少なくとも労基法違反(予告手当違反)として指導されます。
では不認定だった場合はどうなるのでしょうか。
不認定だからといって解雇が無効とはなりません。ですから会社としては「解雇予告手当の支払いや解雇予告」をすることです。
「不認定の取り消しの行政訴訟」も選択肢として考えられますが、過去の判例をみても必ずしも認められるとは限りません。
対象労働者へ「労基署から連絡が入る旨」「不認定≠解雇無効」について、よく説明しておくことも大切です。
まとめ
・解雇予告除外認定制度の活用はケースバイケース、メリットやリスクを考慮する
・認定を受けるためには、通達を参考にし証書書類(自認書など)を充実させる
・リスク対策として、対象労働者へ「不認定≠解雇無効」であることをよく理解させ、不認定の場合は「解雇予告手当の支払い」など速やかに行う
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