翌月に繰り越せる?固定残業の新たな見解

先日、有志の勉強会に参加しました。

テーマは「残業代問題」、講師は弁護士の方でした。

残業は身近なテーマ。そのせいか、いつも以上に意見が飛び交う活気ある勉強会となりました^^

そして弁護士ならではの「司法」目線でのお話、大変勉強になりました。

 

「残業代は請求しません」という誓約書を書かせた場合、会社は残業代を払わなくていい?

→このような合意を「不起訴の合意」といい、訴訟しても原則却下される。但し労使間に「真意の合意」があることが必要で、真意の合意がなければ裁判所は簡単に覆す。

 

残業対策は、許可制より残業禁止命令を

→命令に反して残業している場合は、指揮命令違反として労働時間として認められない判例あり。但し形式的な命令ではダメ。

 

みなしや裁量労働制は導入しない方がいい?

→これらは労基法の労働時間に関する「例外規定」。よって、裁判ではこれらの要件は厳格に解釈される(「例外規定の厳格解釈」という)。要するに、裁判所は例外をあまり認めない傾向がある。みなしや裁量労働制に関する争いでは使用者側が負けることが多い。

 

固定残業は翌月に繰り越せる?新たな残業代の支払い方法!?

→ 固定残業代が実際の残業代より多い場合(会社が損をする場合)、余分に支払った残業代を翌月以降に繰り越すことができる制度が、昨今の判例で認められた。下記参照)

例えば、固定残業代が5万、実際の残業代が前月3万・当月7万の場合、前月の「過払い分」2万円を当月に繰り越せ、当月は不足分の2万を支払わなくてよい、というもの。

 

 

固定残業繰り越し制度、なかなか興味深いですね。

但し地裁判決であり、使用者として大きなメリットがあるわけではないため(そもそも通常に残業代を支払えばよいのでは?)、安易な導入はどうかと思いますが、未払い残業を発生させない工夫として一考の余地はあるのかもしれません。

いずれにせよ、固定残業代の新たな支払い方法として一石を投じた判決だったと言えます。


SFコーポレーション事件(東京地裁 平成21年3月27日判決)

「被告会社の元従業員であった原告による割増賃金請求につき、原告には毎月約32~82時間前後の時間外労働があったと認められるが、同人の労働条件通知書兼同意書および被告給与規程の記載等に照らせば、同人に支給されていた管理手当は時間外・深夜労働割増賃金の内払いであると認められ、未払いの割増賃金は存しないとして、当該請求が棄却された例」

 

会社の給与規程

「管理手当は、月単位の固定的な時間外手当(給与規定第16条による時間外割増賃金および深夜労働割増賃金)の内払いとして各人ごとに決定する(給与規定17条1項)。給与規定16条に基づく計算金額と管理手当の間で差額が発生した場合、不足分についてはこれを支給し、超過分について会社はこれを次月以降に繰り越すことができ る(給与規定17条2項)」

 

会社の労働条件通知書兼同意書

「月単位の固定的な時間外手当の内払いとして、総合職8万円、一般職6万円を支給」
「計算上算定される残業代と管理手当との間で差額が発生した場合には、不足分についてはこれを支給するとしつつ、超過分については被告(会社)がこれを次月以降に繰り越すことができる」


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