「ザ・ゴール」という幻のビジネス書をご存知だろうか。
発売されたのは1984年。
同書で紹介している「制約理論」が、当時の日本経済に有利に働くことを懸念した筆者の意向で、何と2001年まで日本への翻訳出版が禁止されていたという、いわくつきの1冊だ。
原作は、ゆうに500ページを超す大作。書店で買うか買うまいか躊躇していたところ(笑)、目を少し横にやると、何とその漫画版があるではないか!
何ともありがたい。渡りに船だ。(それにしても、最近はやたらと漫画版が増えている)
物語の舞台は、とある赤字工場。
敏腕経営コンサルタントの助言を頼りに、黒字化に向け、所長はじめ部下たちが奮闘するストーリーだ。
会社の目標(ザ・ゴール)は、お金を儲けることだと明確にした上で、会社の全てをお金として測る3つの指標を紹介している。この指標が全ての考え方の基本だ。
①スループット…販売を通じてお金を作り出す割合
②在庫…販売しようとする物を購入するために投資した全てのお金
③業務費用…在庫をスループットに変えるために費やすお金
そして全編でキーになるのが「ボトルネック」だ。
・従業員が休むことなく常に働いている状態は、実は非常に非効率である
・受容と供給のバランスに近づくほど、工場は倒産に近づいていく
ホンマかいな!?とにわかに信じがたいこれらの事象も、ボトルネックの性質や非ボトルネックとの関係性を理解すると納得できてくる。(「ハイキング」の例で説明していたのが印象的だった)
稼働率を上げようと機械化したり、材料をやたら投入しても、結局はボトルネックが処理仕切れなければ過剰在庫や仕掛品を増やすだけだ。それは同時に、スループットが増えないことを意味している。これに気づくべきなのだ。
そこで、生産をボトルネックに合わせリードタイムを短くすることで、在庫を減らしスループットを増やす。顧客への短期納品だって可能になる。企業にとって、大きな強みになる。
制約理論とは、ボトルネックに集中した全体最適のマネジメント理論のことだった。
今までの常識を覆させられたこの理論は、発想の転換がいかに大切かを教えてくれた。
そして、物事のヒントは意外にシンプルに素直に考えるところにあるのではないかとも感じた。
例えば前述の3つの指標にいたっては、実に明快で分かりやすいし、何と言っても実際使える。ROEやらROAやらよくある指標はあまり意味がないことが分かる。また、ボトルネックの話などは、よくよく考えると全くその通りの話なのだ。
一気に読み終えると、早速、製造業を営んでいるクライアントへ同書を紹介してみた。反応は上々だった。
ちなみに「ザ・ゴール」はお金に関するマネジメント書。それ対して前々回、当ブログで紹介した「黒字化せよ!」は人に関するマネジメント書。両者併せて読むのがいいかもしれない。
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