最近、介護事業を営むある企業の組織診断を実施した。
興味深い調査結果が出た。
それは、「能力向上・キャリア開発」というカテゴリにおける労使間ギャップだ。
全般的に低い点数をつけた社長に対して、社員はそれ以上の高い点数をつけたのだ。
なぜこのような結果になったのか?
中小企業は、教育システムが整備されていないケースはよくある。
社長は、社員に必要な研修を受講させたり、資格を取得させたりしているが、仕組みとして体系化されているわけではない。
社長はこれを卑下したのではないか。
一方、社員はどうだろうか。
働く時間のほとんどを顧客(利用者)と接する介護という仕事は、自分の仕事ぶりが常に顧客から直接フィードバックされていると言っていい。
時に厳しい評価もあるだろうが、直接感謝の言葉や笑顔をもらったり、顧客の(良い意味での)変化に気づくこともあるだろう。
そういったことを通じて、社員は自分の有能感や成長感を実感できているのだと思う。
ちなみに顧客からの感謝の言葉は、動機づけの調査をすると必ずと言っていいほど上位にくる。
診断書をまとめ上げた私は、早速、社長に報告にいった。
社長は興味深けに報告書に目を通し、私の報告に聴き入った。
最後に「社長、もっと自信をもつべきです!人材育成は、教育システムや人事制度も大切ですが、それ以外も大切ですから」と伝えたら、社長は安堵された様子だった。
やはり「人材育成≒教育システム」という概念に縛られていたようだ。
もちろん、いくら中小企業であっても、教育システムや人事制度を可能な限り整備した方がよいとは思う。
会社のメッセージが伝わりやすくなり、社員は自分の将来像を描きやすくなるからだ。
でもシステムが全てではない。社員は自ら成長している。
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