三菱自動車が、燃費表示の不正を続けていた問題。
最近の車種だけだと思っていたら、90年代からやっていたという。
僕が社会人になって初めて購入した、当時は三菱を代表するあの四駆(←言い方が古い)も、実は不正の対象だったというからちょっとショックだ。
でも、メーカーが公表している燃費ほど当てにならないものはないから、そういう意味ではどうでもいいのだけれど、長年ユーザーを騙し続けてきたことはけしからん。
さて、今回の不正が起きた本当の理由はよく分からないが、とりあえずノルマに対するプレッシャーなどと言われている。
これは一般企業の営業ではよくある話だが、普通はここにインセンティブがくっつく。
車を1台売ったら10万円の報奨金が出るとか、契約を1つ取ったら3万円の歩合給がつくとか、売上目標を達成したら昇格できるとか。
「上司から怒られないために」といった、マイナス思考なインセンティブもある。
いずれにせよ、このような「交換条件付きインセンティブ」は、動機づけに効果的に働くものだと昔から多くの人々は信じている。
しかし、実はそういいことばかりではない。
交換条件付きインセンティブは、次のような弊害があることが実験で証明されている。
・視野を狭くする
・創造力が低下する
・短絡的思考になる
・成果が落ちる
・内発的動機づけが低下する
・倫理に反しやすくなる など
1つ例を挙げてみよう。
自主的に勉強している子どもがいるとする。親が「良く頑張ってるね」と、良かれと思ってお小遣いをあげるとする。すると、子どものやる気がとたんに失せることがある。
これは、人はお金で自分がコントロールされていると分かると、内発的動機づけが低下するためだ。下手すると、勉強の目的が知的好奇心からお金にすり替わってしまう恐れがある。(但し、生活のために働く営業マンのインセンティブは、子どもの小遣いように単純ではないが)
この話を経営者にすると、多くが驚く。良かれと思ってつけているインセンティブが、逆効果になることもあると知れば当然だろう。
インセンティブの弊害は、理屈で証明するのは難しい。なぜなら、人間の心理が絡んでいるから。
しかし、このような人の心理や不合理性を分かっていないと、例えば賃金制度や評価制度を設計・運用する上で失敗する。(世の中の多くの人事制度はココを全く分かっていない)
三菱自が不正を続けてきた背景には、腐った企業体質やプレッシャー以外にも「倫理に反しやすくなる」といったインセンティブの弊害が関係していたのかもしれない。
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