無期転換申込み権の話。
これは労働契約法第18条の話で、簡単に言えば、平成25年4月1日以降に開始された有期労働契約が通算5年を超えた場合に、労働者本人から無期転換の申込みがなされれば、会社は無期労働契約に転換しなくてはならない、というもの。
会社は拒否することができない。
先日、クライアント先でそろそろ本腰を入れて検討しよう、ということになったのだが、案外いろいろと悩ましい疑問が出てきた。
例えば、無期転換後の定年の設定について。
・仮に60歳定年と設定した場合、既に現在60歳を超えた有期契約社員の定年はどうすればよいのか?
・別途個別に定年を設定できるのか?
・個別に設定できる場合は、どんな内容でも認められるのか?
・そもそも定年を設定できるのか?
労働局曰く「現時点では、できるともできないとも・良いとも悪いとも言えない」そうだ。国や行政は、何かしらのガイドラインや通達を出すべきだ。
或いは、継続雇用について。
・仮に無期転換後の定年を60歳とした場合、正社員や無期契約社員と同様に65歳まで継続雇用する必要があるのか?
・仮に65歳まで1年契約の再雇用とした場合、再び無期転換申込み権が発生することがあるのか?
・その場合、継続雇用の高齢者特例は認められるのか?
労働局曰く「65歳までの継続雇用は必要。但し継続雇用の高齢者の特例は認められる」そうだ。
そして雇止めについて。
・5年を超える前の雇止めは有効なのか?
・「更新する場合がある」とした社員を雇止めする場合、いつまでに本人へ通知すればよいのか?(確か場合により30日前まで、という通達があったと思った)
・無期転換権の行使を拒否した場合、それは解雇と同様に考えればよいのか?
これらは今後、司法判断を待つことになるというのが、大方の見方だ。
そのほか、実務では社員間の取扱いの格差によるトラブルもありそうだ。
会社にとって問題ない社員であれば無期転換し、そうでない社員は5年を超える前に雇止めする、というケースが多発するであろうことは容易に想像できる。
ただ一方で、昨今の人材不足を考えた場合、会社にとって相当問題のある社員でない限り、無期転換を覚悟承知でそのまま契約更新し続ける、という企業も多いのではと予想する。
中にはクーリング期間を設け、意地でも無期転換権が発生しないようやりくりする企業も出てくるかもしれない。
そうなると派遣社員のニーズが高まるのだろうが、昨今の高騰する派遣社員の賃金で、そう都合よくいかないかもしれない。
更に言えば、登録型の派遣社員は、派遣元で有期契約社員という形態が多いが、その場合、派遣元で無期転換申込み権が発生するということになる。
そうなると派遣元で5年を超える前に雇止めをすることも考えられ、そうなると派遣先にも影響を与えそうだ。
あ、あと結構盲点なのだが、60歳の定年退職日と65歳の再雇用契約満了日の「誤差」による「”うっかり”無期転換申込み権」が発生してしまうケースがあるから注意が必要だ。
無期転換申込み権、想像以上に悩ましい。
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