最近、求人関係で少し気になる判例が出た。
・京都でデイサービスを営む会社が、「定年制なし」という内容の求人をハローワークで公開した。
・その求人に対して64歳の求職者が応募。面接時に定年について確認するも会社側は「まだ決めていない」と返答。
・採用時の労働条件通知書には期間の定め(1年間)が記載されていたが、断ることもできず同意する旨の署名捺印をした。
・労働者は期間満了により退職となったが、納得できず提訴した。
結局労働者が勝訴したのだが、主な判決は次のとおり。
・求人票の労働条件は、当事者間においてこれと異なる別段の合意をするなどの特段の事情のないかぎり、雇用契約の内容となると解するのが相当である。
・求人票の記載と異なり定年制があることを明確にしないまま採用を通知した以上、定年制のない労働契約が成立したと認めるのが相当である。
・労働者の同意は自由な意思に基づいてなされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断されるべきものと解するのが相当であり、これは賃金や退職金に限らず同様の重要な労働条件の変更についても妥当するものと解する。
これ以前はどうだったかと言うと、ざっくり言うと求人票の内容はあくまで予定であって、採用時の労働条件通知書などで示された条件が雇用契約内容になる、というのが通説だった。
今回の判決は、その真逆をいくものだ。
また、例え書面で労働者の同意をとっていても、それが本人の自由な意思によって行われたものと客観的に解されない場合は、その同意は無効となってしまう。
これは企業にとっては何とも理不尽で納得しがたいが、昨今このような判決が増えているのも事実だ。
中小企業は求人を出すにあたって、労働条件をあまり深く考えないことがままある。今回のケースもそうだったのかもしれない。
更に昨今は人手不足で、求人の内容を実際よりもよく見せようと(魅せようと?)することも十分考えられる。
今後企業は求人を出すに当たり、より慎重になることが求められそうだ。