ビジネス小説の紹介。
残業税とは、法定労働時間を超えた分の残業代の20%が課せられる税金のこと。労使が折半で負担するが、会社が脱税している場合、労働者が申告すれば労働者はその負担を免れる。
累進課税になっていて、残業が過労死ラインである月80時間を超えると税率は80%に跳ね上がる。
同書は、そんな残業税の徴収を巡って奮闘する仕事一筋の税務調査官と、そのパートナーである熱血労働基準監督官の物語。半沢直樹とダンダリンのような二人だ。←古っ
主人公らが臨検する脱税会社は、居酒屋やエステサロンなど明らかに「ブラック企業大賞」を意識していたり、過労死する労働者が出てきたりと、昨今の労働社会問題を取り上げている。
主人公の心理や二人のキャラクター・阿吽の呼吸といったものも細かく描写されている。
ただ残念ながら、小説としての面白さはもう一つといったところ。
各章、中盤まではそこそこ面白いけれど、いきなり終盤を迎えるようなストーリー展開は何とも惜しい。
そんな僕の勝手な書評はさておき、この残業税というアイデア、実によく考えられていて興味深い。物語では、導入の主目的である残業時間を減らすことに成功している。
企業が恐れる?税務官と逮捕権をもつ労働基準監督官がタッグを組むというのも面白い。
働き方改革は、意識改革だけでなく制度改革も必要だ。時間外上限規制やらホワイトカラーエグゼンプションやらインターバル制度とかいろいろ言っているけど、どれも即効性や効果は未知数だ。いっそ残業税のような思い切った策が必要かもね。