正社員不要論

何かと耳にする「同一労働同一賃金」。

正規と非正規の不合理な格差をなくそうという、働き方改革のうちの1つだ。

額面通りに見れば「同じ仕事であれば同じ賃金を」ということになるのだが、次のような理由で、事はそんなに単純ではない。

・同じ仕事か否かを判断するのは容易ではない。

・日本は職務給ではないから、同一労働同一賃金にそぐわない。

・格差禁止に該当するか否かの判断は、仕事以外の要素も関係してくる。(労働契約法・パートタイム労働法)

・現在係争中の事件もあり、判例や政府のガイドラインはまだ確立されていない。

 

 

ただこの課題、簡単に解決する方法がある。

 

それは、正社員やパート等の社員区分をそもそも設けなければよい。区分を設けるから格差が生まれるのであって、だったら初めから設けなければよいのだ。

これを「正社員不要論」(又は「社員区分不要論」)とでも呼ぼう。

 

 

実は、僕は以前からこの正社員不要論の支持者だったりする。

 

例えば、正社員とパートという区分を設けたとする。すると「あの人はパートだから…」とか「私はパートだから…」という、ある種の遠慮や責任逃れ、”壁”や疎外感といったものが生まれてしまうのが常だ。でもそんな職場・人間関係で、お互いが最高のパフォーマンスを発揮しあえるだろうか。

責任をもって仕事することに、正社員とかパートとか関係ないしね。

 

賃金は、その人の①仕事・役割 ②能力・成果 ③労働時間で決めればよい。①②は、客観的な指標が必要だ。

例え軽易な業務を担当する社員であっても、例え半日しか働かない社員であっても、その分賃金が低くなるだけであって、パートなどと区分する必要はないのだ。当然、正社員不要論には「短時間正社員」という概念もない。

 

日本に非正規労働者が多い理由として、厳しい解雇制限がある。正社員だと解雇するにはハードルが高いため、企業としては、人員調整しやすい非正規を多用しようという発想になるのは当然だ。

それについては、正社員不要論であっても、企業は有期契約や派遣をうまく利用すればいいと思う。但し、有期だからといって賃金が安くなるのではなく、あくまでも賃金を決定するのは前述の①~③だ。

 

 

僕のクライアントに、やはり「正規も非正規もない」という考えの社長がいる。

仕事柄、正社員とパートに差を設けにくいというのが一番の理由だ。賃金も能力による差こそあれ、全員時給にしている。

 

 

日本の企業では、正社員と非正規という概念や社員区分が空気のように当たり前になっている。

でもそれは自社にとって本当に必要なことなのか、いったんゼロベースで考えることが、同一労働同一賃金を考える上でまず最初に必要なことなんだと思う。


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