悩ましいマタハラ相談

最近のネットニュースでこんな記事があった。

採用した社員が、直後に妊娠していたことが発覚し困ったというもの。

 

つい先日、僕もある事業所から同じような相談があった。

面接時に妊娠していたことは分からなかったと本人は否定するも、母子手帳などから明らかに面接時には判明していた。何度追及しても本人は否定する。

それどころか、本人は労働局に相談に行ったらしく、労働局から使用者におとがめがあったとのこと。

 

 

この種のマタハラ相談は悩ましい。

面接のときに「あなたは今妊娠中ですか?」などとは聞けない(せいぜい合理的な根拠を示し、本人同意の上、健康面について聞き出し、その中で本人から自発的に妊婦であることの報告を待つくらいだろう)。ましてや採用後、妊娠を理由に解雇はできない。男女雇用機会均等法で、妊娠・出産等を理由とした不利益な扱いは禁止されている。

出産はおめでたい話だし、本当に採用後に妊娠が発覚するケースだってあるだろう。

でも正直なところ、採用後すぐに出産・育児で休まれると会社としてはきつい、という本音も理解できる。

 

 

前述の相談の案件は、幸い?試用期間として有期契約を締結していた(同内容の労働条件通知書を交付していた)ため、雇止めを勧めた。

試用期間とは社員としての適格性をみる期間。重大なことについて、幾度も虚偽するような人と会社は信頼関係など結べるはずもない。能力以前の話だ。

ちなみに育児休業については労使協定を結べば、採用後1年未満の社員や育休申出日から原則1年以内に雇用関係が終了する社員については、与えなくてもいい。

 

少しテーマからそれるが、「試用期間=有期契約」とすることについては、「期間の定めを設けた趣旨や目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、期間満了で雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立するなどの特段の事情が認められる場合を除き、同期間は期間の定めのない労働契約の試用期間である」とした判例(神戸弘陵学園事件)があるが、労働法学者の中では異論もあるようだ。

実務では少なくとも、その旨を募集広告に明記し、更新条件等を面接時にしっかり説明し、労働条件通知書に明記し交付する、といったことが求められる。

 

 

人材不足で企業の採用基準はますます”甘く”なるだろうし、女性の社会進出は増えている。

いくら出生率が低下していると言っても、この種の悩ましいマタハラ相談は増えるだろう。


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