先日、愛知県一宮市にある たんぽぽ介護センターへ視察訪問した。
同社は、さまざまな工夫を凝らしたリハビルメニューで利用者を元気にし、またスタッフを大切にする経営でメディアにも取り上げられている。
平成27年には「日本で一番大切にしたい会社大賞」に選ばれている。
今回訪れた施設はデイサービスを行っている。スタッフは約200名いて、そのうち90%はパートだ。
10時前に到着したのだが、中に入るとオープンで広々とした施設内に、既に多くの利用者がガヤガヤにぎわっている光景が目に飛び込んできた。
「活気があって、なんだかデイっぽくないなぁ…」というのが最初の率直な印象。
それもそのはず、毎日270名ほどの利用者(平均介護度1.1)が利用する、日本でも有数の巨大施設だ。
ちなみに同社では、利用者ではなく「お客様」と呼んでいる。
同施設では「スマイルシステム」という情報を共有するITシステムをフル活用している。
利用者は毎朝、最初にこの端末に、その日にやりたいことをタッチパネルで入力する。
同社は、利用者の「自立支援」「自己選択」を非常に重んじていて、スタッフは口を挟まない。徹底されている。
続いて利用者は、ICチップ入りのカードにスタッフからチェックを受ける。
これでいつどこで誰が何をしているか把握することができる。
同施設の最大の特徴と言っていい、施設内通貨「シード」とそのリハビリ料金表。
利用者はリハビリメニューをこなすたびに、シードを使って稼いで貯める。これがリハビリのインセンティブになっている。
専用の通帳もあって、なんと最高1億3000シードも貯めている億万長者もいるとか(笑)
ちなみにここ一宮はモーニングとコメダ珈琲の発祥の地だそうだ。利用者も施設内のカフェで早速モーニングを楽しんでいた。もちろん、シード払い(笑)
我々参加者も500シードいただいたのだが、手触りは通常のお札に似ていて、こだわっていてるのが分かる。
カフェで使えたのだが、もったいないので貯めることにした(笑)
2階には、リハビリメニューごとにたくさんの部屋がある。まるでカルチャーセンターのようだ。
通路は、ぐるっと1周約100メートルの回廊になっていて、1周歩くと100シードもらえる。
通常、歩行トレーニングは一方通行が多いが、ここでは双方向自由に歩ける。社会に出たら一方通行はない、という考え方だ。実際に、多くの利用者の方が自分のペースで歩いていた。
パン教室では、本格的にパンを作り、持ち帰ることもできる。講師もプロを呼んでいる。
陶芸教室。
ここは個人的に面白そう。
読み書き計算など「頭の体操」もできる。
大手学習塾と組んで、それぞれの利用者のレベルに合わせた学習プログラムを提供している。
教師は、施設内認定のスタッフも請け負う。
カジノ!
ちゃんとしたカジノテーブルがあり、ブラックジャックなどをする。結構人気があるとか。なんだか楽しそう。
いくら(シードが)儲かるかは運と勘次第。
パチンコ!
大当たりするとたくさんシードがもらえる。
ずっとパチンコに熱中する人もいて、途中、スタッフが声掛けするそうだ。
麻雀ルーム。
同施設では、こういったゲーム性のあるリハビリメニューを「文化系リハ」と呼んでいる。
通常、デイは男性の利用率が低いのだが、ここは男性が来たがる仕組みがあり(文化系リハをはじめ、タクシーでお迎えし重役気分を味わえる送迎など)、男性の利用率は42%にものぼる。
筋トレルーム。
他のリハビリもそうだが、それぞれの利用効果が一目で分かるように、パネルで表示されている。
今、行列ができ抽選になるくらい人気があるのが「レッドコード」という運動系リハビリだとか。
天井から伸びたヒモ?を両手でつかんで体を動かすことで、通常よりも可動域が広がり効果的なんだそう。
プールもある。
泳ぐのではなく、インストラクターに合わせて体を動かす「アクアジム」として利用する。人気があるという。
同施設には、なんと本格的な天然温泉がある。
来た利用者の95%が利用する。しかも1日何度でも入ってもいい。
風呂介助専門のスタッフもいるとか。
脱衣場で説明を受ける絵。
ふと目をやると、利用者の方が気持ちよさげに寝ていたりする…
お楽しみのランチ。
さまざまなメインメニューがあり、メイン以外の料理もバイキング方式になっている。食器の返却も原則自分で行う。
自分で選んで自分で返す、こういった一連の動作が自立支援につながるという考えだ。
返却するとごとに100シードもらえ、中には他の利用者の分も返却したくさん稼ぐ人もいるとか(笑)
僕がメインで選んだのは「返しがつお」定食。栗ご飯で季節感もあり、とても美味だった^^
驚いたのは味が濃いこと。この地方の人は、はっきりした味付けを好むそう。
ちなみに「天ぷら」と「おはぎ」の日は利用者が増える。特におはぎ効果は抜群だとか(笑)
各委員会の掲示板。
同社では、安全運転委員会、感染症対策委員会、緑化組合、インスタクラブ、風紀組合など14もの委員会があり、スタッフは必ずどこかの委員会に加入し活動する。
社内報「ありがとうのたね」。
スタッフの感謝の言葉や感動事例が載っている。
サンクスカード。
会社の指示がなくても、自然にできているという。凄い。
同社のような「いい会社」は、総じて相手に感謝の気持ちを伝えることが自然にできている。
同社では年1回の周年祭に、スタッフのみならず家族も同伴してもらい、そのときに「社内表彰」を行う。
家族の前で表彰されることで、子どもたちも親を誇りに思う。素晴らしい!
施設内には託児所もある。1日の利用料はたったの500円。
同社では「家族の協力・理解があって働ける」という考えがある。だから残業もゼロ。
利用者もそうだが、何よりスタッフが元気がいい。スタッフがやりたいことを優先しやらせているそうだ。
離職率が低い(1%を切っている)理由がよく分かる。
同社には、マイスター制度という人材育成制度がある。
グリーン→ブロンズ→ゴールド→プラチナ→マイスターと昇格していく。昇格するには各検定を受け合格する必要がある。
特に賃金とは関連付けていなかったり、評価制度は特に無いということに驚いた。昇給は原則一律同じだそうだ。
午前中から夕方までたっぷり視察させていただき、利用者が楽しめる工夫、自立支援・自己選択の重視、業務の効率化(IT化)、スタッフへの感謝などを重視した経営を通じて、経営理念である「人が輝く」を実現していることがよく理解できた。やっぱ大賞に選ばれるわけだ。
オープンで包み隠すことなく、いろいろ質問もさせていただき、誠にありがとうございました!