いよいよ来月から働き方改革関連法が順次施行される。
主なものについて、概要をおさらいしようと思う。
①時間外上限規制(大企業は今年4月から、中小企業は来年4月から)
・現在の36協定の特別条項は、事実上の上限がなく、それが過重労働の原因との批判があり、今後は特別条項を設ける場合、時間外労働が次のように制限される。
・年間720時間(月平均60時間)以内
・1ヵ月100時間未満(法定休日労働含む)
・2~6ヵ月平均80時間以内( 〃 )
・一定の業種・労働者(建設業・自動車運転手・医師等)は、適用が5年先となり(内容も一部異なる)、研究開発業務に従事する労働者には適用されない。
・実際の適用は、4月1日以降に到来する各企業が締結している36協定の1年の起算日からとなり、36協定も新しい書式になる。
②有休5日取得義務化(全企業が今年4月から)
・有休が年10日以上発生する労働者(正社員だけとは限らない)に対し、うち5日は発生から1年以内に取得させる必要がある。
・5日には、労働者本人からの申請や計画的付与で与えた有休のほか、使用者が本人から希望を聞いた上で付与した有休も含む。
・半日有休は0.5日としてカウント可能だが、1時間単位有休はカウント不可。
・1年の起算日は、4月1日以降到来する発生日となり、原則労働者ごとに異なる。
・使用者が本人の希望を勘案して有休を与える場合は、その旨の就業規則への規定が必要。
・有休管理簿の作成保管も求められる。
・取得させていない場合、1人当たり30万円の罰金の対象となる。
③フレックスタイム制の拡充(全企業が今年4月から)
・ワークライフバランスや効率的な働き方を促進させることを目的として、フレックスタイム制(の清算期間)が、最長3ヵ月に延長される(今までは最長1ヵ月)。
・清算期間が1ヵ月を超える場合は労使協定の届出が必要。
・起算日から1ヵ月ごとに区分した期間に、1週あたりの労働時間が平均50時間を超えた場合は割増賃金が必要。
④勤務間インターバル制度(全企業が今年4月から)
・過重労働防止策として、勤務間インターバル制度(終業時間から次の始業時間までの間に一定の休息時間を確保する制度)の導入が求められる。但し努力義務。
⑤労働時間把握と医師面接の見直し(全企業が今年4月から)
・健康管理の強化を目的として、原則全ての労働者(管理監督者やみなし労働時間制・裁量 労働制の適用者含む)に対して、労働時間の把握義務が課せられる。
・自己申告制のみでの労働時間の把握は原則認められなくなる。
・医師との面接指導の対象者が、時間外・休日労働が1ヵ月80時間を超え申出があった労働者になる。(今までは100時間)
・これらは労働安全衛生法の改正となる。
⑥高度プロフェッショナル制度(全企業が今年4月から)
・柔軟な働き方の選択肢の1つとして、一定の健康確保措置を講じた上で、労働時間でなく成果で賃金を払う制度が創設される。
・対象者は、一定の高度専門職に就く高所得者(目安として年収1075万円以上)のうち希望者。
・該当者は限定的で現実的な制度ではない。
⑦同一労働同一賃金(大企業は来年4月から、中小企業は再来年4月から)
・正社員と非正規労働者の待遇に、不合理な格差がないよう求められる。
・非正規に対する待遇決定に際しての考慮事項や(求められた場合に)正社員との待遇差についての説明義務が創設される。
・これらは、労働契約法・パートタイム労働法、派遣法の改正となる。
・不合理か否かの判断は、①職務内容 ②異動内容 ③その他事情の3つの要素を元に行う。
・賃金の場合は、基本給や各手当、賞与などそれぞれ個別に判断することになり、それぞれの目的や主旨から適当と考えられる①~③から判断する。例えば通勤手当で言えば、その目的は通勤に要する実費負担と考えられるため、正社員と非正規との間で差があるのはおかしいだろう(不合理だろう)、という判断になる。(①②は考慮しない)
・現在、同一労働同一賃金に関する訴訟が全国で相次いでおり、我々専門家もそれらの判決を注視している状況だが、政府が発表した「同一労働同一賃金ガイドライン」には、主要な判決内容が反映されている。
・今後企業は、正社員と非正規の賃金に差を設ける場合は、それを客観的に説明できるようにしておくことが重要になり、賃金制度の見直しを迫られる場合もある。(それもあって適用時期が来年以降となっている。「まだ先だ」ではなく、今から検討・対策するのが賢明)
⑧月60時間超割増率引上げ(大企業は適用済み。中小企業は2023年4月から)
・月60時間を超える時間外労働をさせた場合、超えた部分の割増率が50%になる。
・法定休日労働分は、この対象に含まない。
今回の関連法は、企業にとっては負担が増えることばかりで、真の働き方改革がもたらされるとは思えない。(考えるきっかけにはなると思うが)
労働力人口が減少していく中、また価値観や人材が多様化していく中、自社が存続していくためには何が必要なのか、どういう働き方が必要なのか、トップが明確にビジョンを掲げ、それを元に職場で知恵やアイデアを出し合うことが、真の働き方改革につながるのだと思う。