本の紹介。
最近は哲学についての書籍や番組をよく見かける。一種のブームのように映る。
将来不安を感じたり、生きづらさを感じたりする人が増えているせいなのだろうか?
本書は、筆者が”本当に使える”と感じた50人の哲学を一挙に紹介している。
人・組織・社会・思考のコンセプト別に分かれていて、哲学者一人に割かれるページ数も少ないため(物足りなさもあるが)、僕みたいな初心者にとっては入門書としても最適だ。
筆者の鋭い切り口による解説もおもしろい。
カルヴァンの「予定説」は確かにその通り。いくら人事評価したところで「管理職になる人間は初めから決まっている」のだ。
マズローの「自己実現的人間」は、自己実現を成し遂げる人たちの言わば「コンピテンシー」であり、大変興味深かった。孤独・少ない人脈・自律・ユーモア・創造性等々…なるほど、なんか分かる。マズローと言えば「5段階ピラミッド」の人だったから、この話は凄く新鮮だった。
フェスティンガーの「認知的不協和」、もの凄くよく分かるわ。人は常に心のバランスを取ろうとする生き物。これで意図的に相手を操れたら凄いね。
アーレントの「悪の陳腐さ」やミルグラムの「権威への服従」は、人が責任転嫁するときの微妙な心理状態をよくついている。組織の不祥事やコンプライアンス違反がなくならない理由がよく分かる。
スキナーの「報酬」やデシの「予告された報酬」は、報酬とモチベーションの関係を語る上でマスト。さすがに普段、賃金制度や評価制度を提案している手前、これくらいは知っていたぞ(笑)
とまぁこんな感じで、一口に哲学といってもいろいろで、むしろ心理学とか道徳とか、そんなものに近い印象のものも結構ある。(そう言えばアドラー心理学を紹介した「嫌われる勇気」を読んだ時は、道徳に近いものを感じた)
どれも人間の本質・本音を赤裸々にされた感じがして、「全くその通り」とか「あるある」とか納得感がある。人は悩める生き物だが、悩んだ末に出てきた答えは意外とシンプルだったり、原点回帰したりする。
であるならば、最初からこういった哲学を知識(武器)として持っておいた方が、人生やビジネスにおいて断然利口である。