承認欲求研究の第一人者、太田肇教授の本。
モチベーションが上がるときは、いつどんなときだろうかと考えると、そこには必ずと言っていいほど、承認欲求が絡んでいる。このブログだって、多かれ少なかれそうだ。
例えマズローのピラミッドを知らない人でも、人から褒められたり、認められたときは、誰しもモチベーションが上がるものだ。
そんな承認欲求にも、実はいろいろと弊害があった。
本書は、承認欲求の負の部分にスポットを当てたという意味で画期的だ。
人は人から認められたいがために、どんどんエスカレートしていき、やがて自分自身を追い込んでいく。昨今のSNSがいい例だ。
責任感が強い人ほどうつ病になりやすかったり、エリートが犯罪を起こしやすかったりといったメカニズムも、負の承認欲求で説明ができる。
人から期待される「認知された期待」が「自己効力感」を上回ると、そのギャップがプレッシャーとなり、やがて承認欲求の呪縛となる。問題の重要性が大きければ大きい程、その呪縛は大きくなる。
承認は外発的動機付けだが、「人から認められたい」と自然に湧いてくる気持ちは内発的動機づけだ。
そのような意味では、「承認欲求最強説」もまんざらウソでないとずっと思っていただけに、本書の内容は少なからずショッキングでもあった。承認行為は、効果がある反面、ときに副作用もある。
「人を育てるには承認が大切です」なんて軽々しく言えなくなってしまった(笑)
本書は、「なんでもほどほどに」「無理に期待しない」「自分軸をもつこと」といった、複雑な現代を生き抜くためのヒントを与えてくれる。