岸見一郎講演

先日、岸見一郎氏の講演を聴きに行った。

岸見氏は(今更説明不要だが)、アドラー心理学を紹介したベストセラー「嫌われる勇気」の筆者であり、哲学者。

最近では、テレビでも活躍されていた。

 

 

講演のテーマは「成功ではなく、幸福について語ろう」。以下、印象に残った内容を箇条書きで記す。

 

・最近は「成功=幸福」とみなす傾向がある。成功とは一般的なもの、量的なもの、条件付きのもの(試験合格等)で、幸福とはオリジナルなもの、質的なもの。

・もう既に我々は幸福であること(幸福は進歩するものではないこと)に気付くべきである。

・嫌われる勇気を読んだ韓国の青年から、自殺をとどまったというメールが届いた。本を出して、届くべき人に届いて良かったと思っている。

・アドラーは、人は人から認められたいと思うと緊張が高まると言っている。周囲から期待されることに対して、裏切ることはつらいが、期待に反する行動をする勇気をもつことが大切。

・子は親の期待に応えられないと、親の気を引こうと非行に走るか、心の病になることがある。特別良くなる必要もないし、特別悪くなる必要もない。普通でよいことを伝えるべき。

・勉強するしないは子の課題である。子が勉強をしなくても困るのは自分自身であり、親はそれを伝える。

・対人関係は悩みの源泉。一方、人と関わらないと幸せになれない。

・しかると「自分は価値がない」と思ってしまう。アドラーは、しかること・感情的になること・怒り・私憤は一切いらないと言っている。

・アドラーは、ほめる必要もないとも言っている。例えば、親が子と出かけ、子が外出先で1時間おとなしく待てた場合、親は「よく我慢できたね」と褒めるが、子は嬉しいとは思わない。なぜなら、子は元来待てるからだ(子がぐずるのは、親が困ることを知っているから)。このとき親は、自分が子の「上」に立っていて、対人関係が「上下」となっている。

・自分の価値を受け入れることが大切だ。自分に価値があると思えるときだけ、人は勇気をもてる。そのためには、まずは短所を長所として見ること。例えば、集中力がない人は「散漫力(いろんなアイデアが浮かぶ能力)」があるということ。飽きっぽい人は「(やめるという)決断力」があるということ。暗い人・病んでいる人は「やさしい」「配慮できる」ということ。

・更に「ありがとう」と言うこと。ありがとうと言われる→人の役に立っている→自分には価値がある→勇気をもてる。先ほどの親と子の例でも、「よく我慢できたね」ではなく「ありがとう」と言うことが大切。

・相手の行動ではなく、存在に注目する。今は「成功=生産性」といった風潮が強いため、何か成果を上げないと価値が無いと見られがちだ。そうではなく、人は生きているだけで価値がある、生きているだけで他者に貢献している。例えば、自分の大切な人が病で倒れた場合、病室に行って顔を見れば、ただそれだけで安心する。

・今を生きることが大切だ。過去はもうないし、未来は手放そう。そうすれば、不安を捨て前向きに生きられる。存在するのは今だけだ。

・人生はさすらいの旅。成功を考える人は目的を定めるが、そのために効率を考える。人生は違う。人生はダンスをするのと同じ。ダンスをする(今を生きる)のに○○に行こうという人はいない。


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