来月から、副業している労働者に係る労災の給付算定の新ルールが始まる。
現在は、例え副業していても、労災を負った勤務先から支給されている賃金を元に、休業補償給付等が算定される。これが9月以降の労災から、副業先の賃金も含めて算定されるようになる。
副業先で労災が起きた場合、どうしても低い賃金で算定されることになり、十分な休業補償が受けられないといった課題があり、今回の改正はこれを是正した形だ。
労働者にはいいことだが、これに伴い我々は事務負担が増えることになりそうだ。生産性が叫ばれる中、正直きつい(涙)せめて労災の電子申請とセットでやってほしいものだ。
さて今回の法改正、背景には国の副業推進がある。
副業を推進する理由として、人材不足対策や柔軟な働き方の促進がある。「年金が枯渇していく中で、自分で稼げる人はなるべく自分で稼いでちょうだい」といった隠れメッセージも込められている。(と思う)
実際、副業をする人、ギグワーカーは増えている。
但し、副業は色々と課題がある。
前述の労災の休業補償もそうだが、何と言っても労働時間の通算問題。
今の労基法では、副業をした場合は「労働時間を通算する」となっている。通常、後から契約した企業に割増賃金の支払い義務が生じると解される。
これがネックとなり、企業がなかなか積極的に副業を認めない原因となっている。
それを受けて、先月発表された政府の骨太方針等には、次のようなことをうたっていて興味深い。
・副業の開始や副業先の労働時間の把握は、自己申告制を設ける。
・申告漏れや虚偽申告の場合は、副業先での超過労働によって上限時間を超過しても、本業の企業は責任を問われない。
・本業の企業が副業を認める際、①本業先企業の36協定内で副業先の労働時間を設定する ②本業先は、予め労働者に連絡することで、労働者を通じて副業先の労働時間を短縮させることができる云々
現実的にそんなことができるのか、実効性は疑問だ。(特に副業先での労働時間調整)
方や労働時間を短くせいと言い、方や副業せいと言う。国の迷走ぶりがよく分る。
副業は何も労務管理だけでない。
人材戦略にも関係してくる。積極的に副業を認める企業とそうでない企業では、当然ながら副業したい人の定着・エントリー具合は違ってくる。前述の通り、今は副業をする人・したい人は増えている。そういった人たちをいかに活用するか。
まずは、それぞれの企業が副業をどう考えるか、さまざまな観点から議論し、副業に対する方針を立てることが重要になる。