今週、同一労働同一賃金の最高裁判決が出揃った。
結果だけ端的にまとめると
日本郵便事件
・扶養手当や病気休暇、夏季冬期休暇、年末年始勤務手当、年始期間の祝日給についての相違 ⇒不合理
・基本賃金、外務業務手当、夏季年末手当、早出勤務手当、夜勤勤務手当、住居手当、通勤費等の相違 ⇒不合理ではない(何ら判断が示されず高裁判決が確定)
大阪医科薬科大学事件
・賞与の相違 ⇒不合理ではない
・欠勤中の賃金の相違 ⇒不合理ではない
メトロコマース事件
・退職金の相違 ⇒不合理でない
・本給、資格手当、賞与の相違 ⇒不合理でない(何ら判断が示されず高裁判決が確定)
・住宅手当、残業割増率の相違 ⇒不合理(〃)
所感としては、全体的にそれなりに妥当な(納得感がある)結果だったと思う。
日本郵便事件では、扶養手当の相違が不合理とされた。当該手当の趣旨目的が「長期雇用の維持」であったため、扶養親族がいて相当に継続的な勤務をしている有期契約労働者にも妥当とするのは、まぁ全うな判断と思う。
病気休暇も然りで、長期雇用を目的として有給としていれば、それは通算期間の長い有期契約労働者にも当てはまるのでは?となりやすい。
大阪医科薬科大学事件では、結局賞与の相違は不合理でないとなった。
ただ注意が必要なのは、これをもって「アルバイトだから賞与を払わなくてもよい」「アルバイトだから正社員の55%程度の賃金でもよい」ということにはならない、ということ。
原告のアルバイトは、業務は相当に軽易であり、勤続年数も数年で、異動もなかったという特殊性を忘れてはいけない。(メディアの取り上げ方に要注意)
メトロコマース事件では、退職金の相違は不合理でないとなった。
大阪医科薬科大学事件然り、職務内容や異動についての相違(同一同一の判断要素)に加え、「正社員登用制度」について言及している点は見逃せない。
正社員登用を制度化し、適正に運用し実績を残せば、それは不合理性を否定する「その他」要素となり得ることが明確になった。
また今後裁判官は、労契法20条から移行したパート有期法8条についても念頭に判断する可能性を残した。
もし賞与や退職金が不合理と判断されていれば、(いずれ賃金消滅時効も5年に延長になることを加味すると)、今後の企業経営に大きな影響(労働者からの訴訟や莫大な損害賠償)を及ぼすことも考えられた。そのような意味では、正直ホッとした。
あとやはり諸手当は、支給基準が明確が故に非正規労働者にも当てはまりやすく、他方、賞与や退職金は、支給基準が複合的で非正規労働者には当てはまりにくいのだと再確認した。
同一同一は非常に分かりにくく、また判例も色々で、それが企業が対策が進んでいない(或いはあえて様子見をしていた)大きな理由となっていた。
今回、一同に判決が示されたことで、今後対策に動き出す企業は増えるだろう。中小企業への法改正施行は来年4月。もうまったなしだ。