本の紹介。
「嫌われる勇気」の著者で哲学者の岸見一郎氏によるリーダーシップ論。
筆者の書籍は今まで何冊か読んでいて、講演も聴きに行ったことがあるが、本書では、アドラー心理学に基づいた著者の主張をリーダーシップ論に展開している。
「ほめるのをやめよう」というのは、簡単に言えば、ほめることは、前提としてそこに上下関係が内在していて、結果、ほめられた方は「自分には価値がない」と思いやすくなるということ。人は、自分に価値があると思うときにだけ勇気が持てる。
親子関係だけでなく、リーダーと部下の関係も基本同じだ。
以前僕は「承認≒ほめる」と捉えていたことがあったが、それは勘違いだったことに改めて気づかされる。
良かれと思いリーダーはつい部下をほめようとするが、それは上から目線の行為であり、相手を尊重していないのだ。相手が部下であろうが子どもであろうが対等なのだ。だからそんな時は「ありがとう」と言えばいい。相手の存在自体がありがとうなのだ。
承認欲求は、部下だけでなくリーダーにだって当然ある。ただ筆者は、上司は部下から承認されようとは思うなと言っている。貢献感があれば、承認欲求は自ずと消えると言う。
承認は動機付けになるが、他方、承認欲求は相手に期待しすぎたり、承認されようとエスカレートしていったりと実は負の面も多い。(太田肇著「承認欲求の呪縛」参考)
リーダーは、嫌われる勇気だけでなく決断する勇気も必要だ。
「『途中で気を変えるのはけしからん』というようなサムライ的正義感から自由になった方がいい」というある哲学者の言葉のとおり、リーダーは時としてルールを変更する決断も必要だ。
昨今のコロナ対応で、一旦決めたルールを固くなまでに変えようとせず、結果世論に押されて後手後手のお粗末な対応を続けているこの国のリーダーや政治家たちに、是非読んでもらいたいくだりだ。
本書は、リーダーとして大切な自分自身との向き合い方や心の持ちようについて書かれている。つい人は相手に何か求めようとするが、そうでなく、全ては自分自身なのだ。