先日、クライアント先での会話。
そのクライアントは、つい最近全社員を対象に昇給したのだが、部下との会話中、部下からこう言われたという。
「賃金はやりがいというものではなく、あくまでも最低ラインの話ですから」
今どきの若いやつは…と思わず愚痴が出るかもしれないが、何も驚くことはなく、これはまさにハーズバーグの動機付け論に他ならない。
この理論は、様々な要素を動機付要因と不満足要因に分ける理論なのだが、賃金は基本後者に該当する。
前者は、文字通りやる気につながる要素で、例えば仕事そのもの、裁量、やりがいなどがある。
後者は、その不満を解消してもやる気に転じることが難しい要素で、例えば会社の方針や管理、そして賃金などがある。放っておけばやる気は下がるし、離職理由になるかもしれないからやっかいだ。
この理論から言えるのは、会社は昇給させたり、賞与を払ったりしても、
「その分、やる気を出してもっと会社に貢献してね!」
などと間違っても期待してはいけないということ。
繰り返すが、賃金は不満足要因だから、昇給や賞与で社員の不満が解消されたとしても、社員にとってはそれが当然の状態になるだけで、それ以上社員のやる気を引き出すことは難しい。
クライアントへこの理論について説明すると、妙に納得した様子だった。
この理論を理解しておかないと、部下とのギャップにずっと苦悩することになる。
残念ながら賃金で期待することはタブーなのだ。