公立教員の残業代を定めた「給特法」が、実に50年ぶりに見直されるという。
総支給額の4%相当を残業代として支給しているが、これを10%以上に引き上げるという。教員の異常な過重労働からすれば、このルールがずっと放置されて続けてきたこと自体信じられないが、単に%を上げるという議論では何の根本的な解決にならない。仮に10%になったとすると、月給30万円の人で3万円は残業約14時間分だ。この先も「定額働かせ放題」と揶揄されるのだろう。
労基法(割増賃金)を適用するとか、或いは定期的な残業調査を行い、都度支給率を見直すなどのルール改革が必要だ。もちろん、ルール改革だけでは働き方改革とはとても言えないが。
さて定額と言えば、民間企業でも固定残業代を導入しているケースは未だ多い。(多くは給特法のような%ではなく金額固定)
とは言え経験則上、その多くが適切に運用できていない。適切に運用できていないということは、未払い賃金を請求されるリスクが少なからずあるということだ。
固定残業代が有効となる要件はいくつかあるが、例えば主なものは
・明確区分性
・対価性
・規定と周知
明確区分性とは、通常の労働と時間外労働に対する賃金が明確に区分されている必要があるということ。よく「○○手当に残業代を含む」のような規定を見かけるが、これホント危ない。せめて「○○手当全額を時間外手当に充当する」といった規定にするのがマスト。これらは似て非なるもの。上戸彩と綾戸智恵くらい違う。
更に、社員へろくに周知・説明できていないケースやまともに残業時間管理できていないケースもある。固定残業代を入れると、会社は「一応残業代払ってます」「残業時間を管理しなくてよい≒みなし残業」といった認識になりやすのか、脇が非常に甘くなる。固定残業はみなしでも何でもないですから~残念っ!
現在、未払い賃金は、最大過去3年分(いずれ5年分)請求されるリスクが生じる。固定残業代が認められないと、それらを基礎賃金に含めて再計算することになる。更に一人の問題では済まないケースもある。
我々専門家は、通常固定残業代は勧めない。なぜなら、リスクが分かっているから。多くの企業は簡単に考えていて、適切にできないだろうことが容易に想像できてしまうから。
もし固定残業代を検討する場合は、我々専門家によく相談し、リスクをよく分かった上で、それでもやりたいのなら徹底的に適切にやるということ。それのみだ。素人が真似事で簡単に手を出せるものではないのだ。