先日、クライアントから内定を取り消したいという相談を受けた。
内定後、どうしても採用できない事情が発生したらしい。
この相談、次のようなさまざまな観点がある。
・そもそも内定とは何か
・労働契約はいつ成立するのか
・内定取り消しは解雇になるのか
・どのような場合に解雇が成立するか など
内定とは、企業と求職者との間で入社の合意が取れ、労働契約が成立した状態をいう。
通常、企業が内定通知書等を求職者へ通知し、求職者は誓約書等を企業へ提出することで内定=労働契約が成立する。書類でなくても電話で採用する旨を伝え、求職者が承諾すれば内定=労働契約が成立する。
だから、内定後に内定取り消しをすることは解雇に該当する。
では解雇予告(手当)の手続きが必要になるかは、法的な観点と行政の解釈では相違がある。
法的には手続きは不要とされている。なぜなら、労基法で試用期間14日以内に解雇する場合は手続きは不要とされている以上、採用前の段階でも当然不要になるという考え方から。
他方、監督署は手続きが必要であるスタンスを取っている。
解雇が成立するかどうかは、通常の解雇の考え方になる。客観的合理性と社会通念上の相当性という要件を満たす必要があるのは、内定取り消しも一緒ということだ。
更に懲戒解雇なら就業規則に規定されている解雇事由に該当するなどのいくつかの要件がある。もちろん、解雇予告手当を払えさえすれば解雇が成立するわけではない。
今回の相談は、結論から言えば、クライアントが求職者へ誠意をもって謝罪・説明し、解雇予告手当を払うことで決着した。
解雇予告手当については、前述のとおり突っぱねることもできたのかもしれないが、やはりまず求職者の生活を考える必要があるだろう。
更にレピュテーションリスク(風評被害)を考えればなおさらのこと。
内定取り消しは、さまざまな観点や注意点を孕んでいる。